子どもへの声掛けの引き出しを増やすには?

新年度が始まり、子どもと向き合う中で

かわいいな。
うれしいな。
やりがいがある!
~と感じてワクワクされる方もいれば、
なかなか子どもへのかかわりがうまく行かず
もどかしい気持ちを持て余し
そんな気持ちを子どもにぶつけて自己嫌悪に陥るという
悪循環な人もいらっしゃるかもしれません。

私自身、子どもが好きで保育の現場に入ったはずなのに、
いつの間にか
「子どもを動かせる保育士が、いい先生」
~という、謎の暗示にかかっていました。

とっても声掛けが苦手で、
声を掛けようとするほどに子どもを脅すような、
責めて追い詰めるような声掛けしか浮かんでこず
そんな自分に自己嫌悪に陥っていた時期が長くありました。

なので、今回のこの記事は
昔の私のように悩んでいる人・行き詰っている人が
少しでも心が楽になり、保育が楽しくなる。
そんなきっかけになればいいなぁという願いから
書いております。

当時の私に多かった声掛けは、

*やらせる声掛け

「○○して。次は○○して。
いいから、○○してからにして。」
~という、指示。

*保育者の思い通りに動いた子をほめる声掛け

→暗に、できたら褒められるよ、ということで
子どもが「自分の意志」で行うのではなく
「褒められたいから」やるようになるというダメなやつです。

*他の子と比べ、悔しさでやらせようとする声掛け

「どっちが○○上手かな?」
「早くできるの、だ~れだ?」
「よ~い、ドン!」
~という、保育者主体で子どもを躍らせるかかわりです。

・・・などなどの、オンパレード。

じつは、やさしく言葉をかけて
子どもと笑顔で生活を共にする先輩もいたのですが
私にはそれが通用しなかったのです。

なぜ?

同じようにやっているのに
わたしだけうまく行かないのーーー?

と思っておりました。

今思うと、心が伴っていなかったからだと思います。

「やらせよう」という意識が先にあり、
そのための、先輩の言葉真似だったのです。

悪気はない。
ただ、子どもの生活をスムーズに前に進めるため。
そう思い、自分なりの試行錯誤をしていました。

子どもの本当の成長とは?

けれども—
子どもの長い人生を考えると、、

「保育者の顔色を見て生きる」
=自分で考えるよりも、基準が他にあり、
機嫌を損ねないように
自分の気持ちや感じていることに蓋をする・・・

という、悪影響があり。
本当の意味での信頼関係には、なりにくいのです。

そして、こんな声掛けをしていたので
子どもたちから見透かされ、
話を聞いてもらえなくなりました。

そのあたりから、

言葉かけって何なんだろう?
ただ引き出しを増やしても、使えない。
同じ言葉を使っているのに、分かり合えない。
良かれと思っても拒否される。

と、ぐるぐるする日が続きました。

そして、自分の中でも感じていた

「何のためにやらせてるんだろう?」
「保育者がやらせるの??」
「なんか、変じゃない??」

という疑問が頭の中を駆け巡り、
じわじわとかかわり方を見つめ直し始めました。

そんな中で、

「子どもって、
小さい体に大きな魂が入っているんだな。」

ということに気が付いてからは
「何かをさせよう」という捉われを手放し、
ただ一緒にいる。

「あったかいねぇ~。」
「風が気持ちいいね」

何かをする、させるといったDo(すること)ではなく
Be(在り方・在る、ということ)に焦点を当ててみました。

ただ、感じてることを分かち合う。

「桜の花びら集めて桜吹雪しちゃう?
奇麗だよ~。せーの!ひゃ~!!」
「きれ~い!!」
「きれいだね~。」
「もう一回やりたい!」
「あつめてあつめて!」
というように、

何か目的をもって‟させる”のではなく
会話や目線での気持ちのやり取りが
楽しいと感じるようになってきました。

そうすると、子どもたちは様々な表情を見せてくれるようになり
生活の場面の中でも

一緒に考える

「そろそろご飯だけど、どうする?」
「え~。やだ。まだ遊びたいもん。」
「あ、そうなんだ。じゃ、先入りながら待ってるね~。」
(・・・しばらくして気が済んで 自分から中に入ろうとする)

分かち合う

「ニンジンってどうやってなっているか知ってる?」
「え~、知らない。」
「お友達が畑をやっていてね。
前に一緒に収穫しに行ってきたことがあるんだ。」
「え~!!見たことあるの?」
「そうなの。どうやってなってると思う?」
「木になってる!」
「そう思うんだね。じつは—。」
「え~、すごい!!どんなにおい?」

・・・と好奇心が湧いてきてお話が弾み
給食の時間も楽しい時間へと変わっていきました。
分かってほしいことは、子どもが受け取りやすい表現で。

もう!とイライラした時には、
どうして今のは伝わらなかったのかな?
何が起こっていたのかな?
どういう工夫をすると、子どもが理解しやすかったのかな?

・・・ということを考えるようになりました。

では、声掛けの引き出しは、
どうやって増やすのでしょう?

私の場合は、まずは子どもの気持ちになって

「自分だったら、どう声を掛けてほしいか?」
「どんな言葉やお話・声掛けをすると腑に落ちるのだろう?
自分からやりたくなる・ワクワクする伝え方は?」

といったことを考えて、
子どもと一緒に見つけていくようにしました。

たとえば、
「お友達をたたくのはいけない!」
ではなく、

「たたかれると、痛いね。
痛いことをされると、
お友達はうれしい気持ち? 嫌な気持ち?
悲しい気持ち? 寂しい気持ち?
どんな気持ちになるのかな。」

と子どもに聞いてみる。

そうすると、
「嫌な気持ちになる(涙)」
と泣き出す子がおり、

その後 その子が他の子のけんかに立ち会った際
「〇〇ちゃんが嫌な気持ちになるよ。」
と、身に覚えのある言葉で仲裁をしているのを見て
「おお、人間って自分が腑に落ちたことは
自分から進んで行うことができるのか!」

・・・と、深く納得しました。

また、仕事以外でも
興味の湧いたことに自分から飛び込み、
足を運ぶことで保育者としての土台が広がり、
子どもと一緒に分かち合う話題が増えていきました。

保育者自身の成長がカギとなる

「声掛け」や「かかわり」のためには、

保育者自身の成長
(反射的に言ってしまう言葉や行動を
コントロール・選択できるようになること)

・保育者自身が感動する体験
・喜びを分かち合う体験
・何かを達成する体験

~をたくさん重ねて
子どもの様々な気持ちや場面に寄り添うことができるような
資質の向上が大切だと痛感するようになりました。

思えば、短大の先生に
「保育者として、豊かな体験をたくさん重ねなさい」
といわれたことがありました。

当時はその意味が分からなかったのですが
時が経つほどに、その重要性を痛感します。

* * * * *

「いますぐ、声掛けの引き出しを増やしたい!」
そう感じているあなたは、向上心がある人です。

今はもどかしいかもしれませんが、急がば回れ。
これを機に、保育者としての土台作りを意識してみませんか?

小さな一歩を、応援しております。

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