その体験が、必要だった~体験からの学びを支えるコミュニケーション
こんにちは、松原です。
新人の先生と組むことになった中堅、リーダーさん。
主任として、中堅職員を指導する側に立つ方。
また、施設長として 職員を導いていく立場の方。
~誰にも共通する課題として、「育成」があるのではないでしょうか。
新人さんやまだ慣れない職員であれば、なるべくなら
保育がスムーズに進むようにしてあげたいと思いますし、
なかなか思うようにクラスの運営ができず、抱え込んでしまうリーダーさんに対しては
「もっと視野を広げて!」とやきもきする気持ちになることもありますよね。
また、施設長として園を担う立場であれば
思いがあるからこそ、目の前のことに振り回されてしまい
子どもや保育と向き合うことが出来ずにいる職員に対してのもどかしさを
もやもやと感じることもあると思います。
私もまさに、そうでした。
これは、施設長だった時のことです。
上手くやらせてあげたい思いが裏目に
若手の職員に、なるべくなら上手くやらせてあげたい。
失敗してほしくない。
出来れば、成功体験を積ませてあげたい。
自信をつけてあげたいーーー。
また、忙しい保育の毎日の中で
「即戦力になってほしい」という思いもありました。
~その思いが強くなり、
「こうすれば、できるよ。」
「まずは、○○してね」
「まだ○○していないの?」
・・・と、自分の思いを押し付けてしまうことが続きました。
そうする中で 次第に微妙な空気感になり、
「なんかある?」と尋ねても 返事が返って来ない状態に。
「こんなに心配しているのに、どうしてのらりくらりしているの?」
やきもき、イライラする日が続き
思うように動けないことによる失敗を、
自分のことのようにもどかしく感じてました。
今思うと、そんな私のイライラした雰囲気が
余計に相手をおびえさせ、委縮させていたのだと思います。
まさに、育成の悪循環ですね。
「失敗」?それとも「体験の機会」?
そんな時 私から見ると「失敗」と思える出来事が起こりました。
このことは、何度も話してきたじゃない。
だから言ったじゃない---!
・・・苛立ちを感じながらも本人の顔を見ると、なんと
「初めて知りました!」と無邪気に笑っていたのです。
「えっ!?」私は目が飛び出るほど、驚きました。
何を言っているの?
そんなの、分かっているでしょう!
けれども、ちがったのです。
先輩たちに聞いたこと・教わったことは「知ったこと」「知っていること」。
けれども、自分が実際に出会い、経験したことは
かけがえのないインパクトを伴う「経験というギフト」なのです。
もしかしてーーー私自身が、良かれと思って先回りをしすぎて
彼らの「体験のチャンス」を奪っていたのではないか。
そんなことに気が付き、ゾッとしました。
そうか、「体験から気付き」が大切なのだ、と。
答えは一つではない、ゴールを共有する中で見つけるもの
私たちは、自分が辿ってきた道が「正しい道」だと、
どこかで思っているのかもしれません。
けれども、じつは人はそれぞれ 生まれた環境も違えば、個性も違います。
ここに至るまでの道のりも、異なります。
つまり、みんな 違うのです。
たまたま自分の時には、そのやり方や道のりが当てはまったけれども
その時と今とでは、子どもや保育を取り巻く状況も異なります。
そんな中で大切なのは、基本となる概念や知識を伝えながらも
みんなで目指していきたい「ゴール」を共有し、
道のりを一緒に考えて行くことなのではないでしょうか。
もしかすると、自分たちにとっては
「えっ!?」と意表を突く答えが出てくることもあるかもしれません。
けれども、もしかすると 自分には考え着きもしない
新しい答えなのかもしれません。
自分を信じてくれる人の存在が、勇気になる
とはいえ、見たこともない、聞いたこともない、
一見無謀にも思えるチャレンジを、みすみす見送っていいものでしょうか?
「大丈夫なの??」
「それ、うまく行くの?」
~そんなハラハラしたまなざしは、
相手の不安に火をつけてしまうこともあります。
私自身、してもらってうれしかった師匠のかかわりは
「あなたなら、大丈夫。やってごらん。
なんかあったら、助けるから。」
~という言葉でした。
まずは、誰よりも相手を信じて、応援する味方でいてくれること。
それが相手の勇気になり、行動につながっていきます。
ぜひ、「それ、いいね!やってみたら。」と後押しをし、
「どうしていくの?」「こんなときはどうする?」と
相手のイメージを広げていくようなコミュニケーションで
リスクへの対応の視点やできそうなサポートについて、一緒に話してみてくださいね。
体験からの気付きを後押しするコーチングコミュニケーション
自分自身を振り返ってみても、痛い体験や失敗をした分だけ学んだことがあり、
このような思いを二度としないために、
どうしようかという今後への工夫につながっていきました。
このように、成長のためには「体験と気づき」が大切です。
ですが、忙しい毎日の中では
なかなか体験を自分自身で振り返るタイミングもないままに
日々の保育に追われてしまい、同じ失敗を繰り返してしまう---という
悪循環もあるのではないでしょうか。
そんな時、同じクラスでなくても、同じ園にいる仲間であればできるかかわりがあります。
それは、振り返りの中でのコーチングです。
コーチングとは、相手の気付きに寄り添うコミュニケーションであり
認知・問い掛け・反映・フィードバックなどを通じて、
内側にある可能性を呼び起こすものです。
育成の相手が年下や若手というだけではなく、
ときには年上や、長く勤めて下さっている非常勤の先生ということもあるでしょう。
どんな時も、相手の尊厳を尊重しながら、
「どうしましたか?」と声を掛け、
「何が起こっていたのでしょう?」と一緒に出来事を振り返りながら
「その体験から、どんな気付きがありましたか?」
「今度はどうしていけるといいでしょう?」
~と、相手の中の答えを整理していくサポートをしていきましょう。
育成支援の基盤となるのは信頼関係
まずは、やってみる。
うまく行ったら、成功体験を一緒に喜び合い、次への後押しをしていきましょう。
失敗をしたら、体験というギフトをいただいたことに感謝し、
一緒にふりかえりからの学びを得ていきましょう。
そんなコミュニケーションをはかるためにも、
安全な関係性ーーーなるべく気軽にいろいろな話ができるような
信頼関係を築いておくことが大切です。
まずは、子どもの感動エピソードの共有など、
喜びを感じ合えるコミュニケーションを積み重ねていきたいですね。
心を開きやすくなるコミュニケーション・コーチングのかかわりについては、
8月31日の講座の中でワークで体感し、気付きを得られる準備を進めています。
ぜひ、お役立てください。