子どもたちが街を動かす!──「とさっ子タウン」「高知こどもファンド」から見えた希望のカタチ
「子どもたちが街を、ファンドを運営している!?」
そんな驚きと感動に包まれたのが、こども環境学会2025高知大会・分科会II「子どもが主役のインクルーシブなまちづくり」の会場でした。子どもたちは会議に参加して自分の意見を述べ、大人の意見を付箋にまとめてプレゼンテーションし、次世代の担い手として地域に根づいていました。
さらに、高校生のみで高知ユナイテッドのホーム戦の清掃ボランティア運営を任されているという話まで!
数年前、北海道・網走で開催されていた「ミニオホーツク」に感動し、「こんな素敵な取り組みがあるなら、また行きたい!」と感じた経験があります。そんな私が、今回こども環境学会に一人で参加を決めた理由は、高知でのこの活動に、ぜひ直接ふれたいと思ったからです。
とさっ子タウンは、ドイツのミニミュンヘンにインスパイアされ、2008年から準備を始め、2009年6月におためし開催。コロナ禍での困難を乗り越えながらも、むしろそれを新たなチャンスとして、進化し続けています。
内側から湧き上がる情熱をまっすぐに言葉にし、「もっと高知に貢献したい」と語る子どもたち。その姿には、確かな希望の光が宿っていました。
とさっ子タウンとは
NPO高知市民会議が主催する「とさっ子タウン」は、小学4年生から中学3年生までの子どもたち約400人が参加する仮想の街です。社会の仕組みを体験し、学ぶことを目的に運営されています。
<活動の流れは次の通り>
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ハローワークで仕事を探す
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仕事をしてお給料を得る
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銀行で給料を受け取る
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税務署で税金を納める
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得たお金で買い物をしたり、学びのアカデミーに参加したり
市長や議長、放送局や病院、パパラッチまで、さまざまな仕事が用意されており、起業も可能です。
税率が上がると税金もアップするなど、リアルな社会とリンクした設計になっているのも特徴。2024年からは、外出が難しい子どもたちも参加できるよう、分身ロボット「ORIHIME」が導入され、バディ制度も導入されました。
保護者は街には入れません。代わりに、子どもたちが発行する「とさっ子タイムズ」を家庭に持ち帰り、親子で話題にすることで家庭とつながる仕組みになっています。街に入れるのは、実行委員や協賛企業に限られますが、ツアー形式で様子を見ることができます。
この活動は10年以上継続されており、現在では1日に約120人の来場者が訪れるほど盛況です。
高知こどもファンドとは
「自分たちの街を良くしたい」という想いから生まれた高知こどもファンド。ここでは、応募も審査もすべて子どもが行います。
プレゼンテーションの後には審査員との質疑応答も。テーマは食、防災、地域福祉など多岐にわたります。これまでに関わった子どもは延べ2000人以上。寄付件数は345件、総額はなんと1670万円にものぼります。
「町のために役立ちたい」「街づくりって楽しい」「大人とのつながりが増えた」など、子どもたちの声が取り組みの力強さを物語ります。
信頼して任せること。そして、意見を出し合い、共に考えるプロセスを大切にすること。子どもも大人も対等な立場で、一緒に悩み、楽しみながら進めていくまちづくりの姿がそこにあります。
当事者7人のリアルな声
2009年から参加している子や、高知こどもファンドに関わり続けてきた学生・社会人まで、7人の体験談が披露されました。内容は以下の通りです:
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小4から中1まで参加し、職業体験を超えて社会の仕組みに衝撃を受けた
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駅弁プロジェクトに1年かけて取り組み、四国駅弁大賞を受賞
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「行ってみようかえ?」という軽い気持ちで参加→市長選に立候補し当選、人生が変わった
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コロナ禍で「おでかけとさっ子タウン」を企画、「腹くくろうや!」の言葉が印象的
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隠岐の島での生活を経て高知に戻り、教員を目指すように
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小5からこどもファンドに参加し、野草を使った保存食づくりに挑戦
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こどもファンドの審査員になり、「落とすつもりだった」が大人の助言で視点が変化
他にも、地域での清掃活動、高知ユナイテッドの清掃ボランティア運営、高校生同士の自主的なネットワーク形成など、若者たちが次々と新しい取り組みを始めています。
活動の継続には、学校に縛られない仕組みが必要とされ、「九重ユース」などの若者部会が生まれています。
「自分の地域の“当たり前”を、大人が“価値”として教えてくれた」──そんな気づきが、次のアクションへとつながっています。
高知の未来への願い
「若々しい高知になってほしい」
「緑と環境資源を大切にできるまちであってほしい」
「昔ながらの情熱も、新しい風も、大切にできる地域へ」
少子高齢化が進む中でも、若者の力を信じることが地域を元気にすると信じて、子どもたちは活動を続けています。社会や仕事の仕組みを知る機会を、小さいころから持つことが、未来の選択肢を広げる。
「地域の大人の顔が見える世界を、子どもたちに届けたい」
その思いが、高知の“当たり前”として、今、広がっているのです。
この素晴らしい取り組みについては、後日「うめちゃんねる」でも詳しくご紹介予定です。どうぞお楽しみに!
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