子どもの安全は、社会とつながっている──事故や不適切保育を”個人の問題”で終わらせない
ニュースで、保育事故や不適切保育の報道を目にするたび、心が苦しくなる。
「なんで、こんなことに…」
保育の現場で働く人なら、そんな報道にいたたまれない気持ちになったことが、一度はあるのではないでしょうか。

Contents
ニュースの向こう側にあるもの
ニュースで報じられる保育事故や不適切保育。
報道では、「保育士が」「園が」という言葉が繰り返され、まるで個人や園の責任だけが強調されます。
もちろん、起きてしまったことへの責任は重いです。
ただその背景には、個人や園だけの問題ではない、もっと大きな社会的要因が隠れているようにも思うのです。
背景にある社会的要因
<人手不足>
保育の現場は、慢性的な人手不足に悩まされています。
「今日、○○さんがお休みで…」
そんな日、残された職員で何とか回す。一人ひとりの負担が増え、目が行き届かなくなる。
「もっと人がいれば」と思っても、募集しても集まらない。
それは、園の努力だけではどうにもならない、社会全体の問題です。
<業務過多>
保育の仕事は、子どもと向き合うだけではありません。
書類作成、行事の準備、保護者対応、会議、清掃、環境整備…。
やるべきことが山積みで、「子どもと向き合う時間」が削られていく。
「本当は、もっと一人ひとりの子どもを見たいのに」
そう思いながらも、目の前の業務に追われる日々。
心に余裕がなくなり、ふとした瞬間に、つい意識が散漫になってしまう。
それは、個人の問題でしょうか?
<保護者対応の変化>
保護者との関係も、以前とは変わってきています。
保護者の価値観も多様化し、一人ひとりに寄り添った対応が求められる一方で、そのための時間や人手は足りない。
保護者対応に疲弊し、本来の保育に集中できなくなる。
そんな悪循環が生まれています。
<保育者自身の孤立>
「誰に相談したらいいか分からない」
「弱音を吐いたら、ダメだと思われるかも」
保育者自身が孤立し、悩みを抱え込んでしまう。
同僚に相談できる雰囲気がない、園長や主任に話しても理解されない、外部に相談する場所も知らない。
そんな中で、一人で抱え込み、疲弊していく。
そして、ある日、限界を迎えてしまう。
「気をつけましょう」だけでは防げない現実
事故や不適切保育が起きるたび、「気をつけましょう」「注意しましょう」という呼びかけが繰り返されます。
もちろん、気をつけることは大切です。
でも、「気をつけましょう」だけで防げるなら、こんなに事故は起きていないはずです。
「気をつける余裕がない」環境にも問題はあるのではないでしょうか。
人手が足りず、業務に追われ、保護者対応に疲弊し、孤立している──。
そんな状態で、「もっと気をつけて」と言われても、どうすればいいのでしょう。
社会構造と現場がどうつながっているか
保育の現場で起きている問題は、現場だけの問題ではありません。
人手不足は、保育士の待遇や社会的評価の低さと関係しています。
業務過多は、保育に求められることが増え続ける一方で、それを支える体制が整っていないことと関係しています。
保護者対応の変化は、社会全体の価値観の多様化や、子育ての孤立化と関係しています。
保育者の孤立は、保育現場のチーム体制や、相談できる環境の不足と関係しています。
これらはすべて、社会構造とつながっているのです。
だからこそ、事故や不適切保育を「個人の問題」で終わらせてはいけません。
「あの保育士が悪かった」「あの園が悪かった」で終わらせてしまえば、また同じことが繰り返されます。
本当に必要なのは、社会全体で保育を支える仕組みを作ることではないでしょうか。
子どもの安全を守ることは、保育者を守ることでもある
子どもの安全を守りたい。
それは、すべての保育者の願いです。
でも、その願いを実現するためには、保育者自身が守られる必要があります。
十分な人手がいて、業務に余裕があり、保護者との信頼関係が築けて、悩みを相談できる環境がある。
そんな環境があってこそ、保育者は安心して子どもたちと向き合うことができます。
子どもの安全を守ることは、保育者を守ることでもあるのです。

安全を”現場努力”だけに押し付けない視点を持とう
「もっと頑張らないと」
「もっと気をつけないと」
そう思って、保育者は毎日必死に頑張っています。
でも、それだけでは限界があります。
安全を”現場努力”だけに押し付けるのではなく、社会全体で考えていく必要があるのです。
- 保育士の待遇を改善すること。
- 業務を見直し、本当に必要なことに時間を使えるようにすること。
- 保護者と園が、お互いに支え合える関係を築くこと。
- 保育者が孤立しないよう、相談できる場を作ること。
これらは、現場だけではできないこと。
行政や、社会全体で取り組むべき課題なのだと感じます。
一人ひとりができることから
「社会を変えるなんて、自分には無理」
そう思うかもしれません。
でも、一人ひとりができることがあります。
現場で働く保育者なら、悩んでいる同僚に声をかけること。「大丈夫?」「何か手伝える?」そんな小さな声かけが、誰かを救うかもしれません。
園長や主任なら、職員が相談しやすい雰囲気を作ること。「困ったら言ってね」「一緒に考えよう」そんな言葉が、安心につながります。
保護者なら、保育者に感謝の言葉を伝えること。「いつもありがとうございます」「先生のおかげで、子どもが楽しそうです」そんな言葉が、保育者の心を支えます。
そして、社会全体で、保育の大切さを発信していくこと。
保育は、社会の未来を育てる大切な仕事です。
その価値を、もっと多くの人に知ってもらうこと。
それが、子どもの安全を守ることにつながるのではないでしょうか。
事故や不適切保育を「個人の問題」で終わらせず、社会全体で考えていく。
そして、保育者も、子どもも、みんなが安心して過ごせる環境を、一緒に作っていきませんか?
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保育コミュニケーション協会 代表/子ども安全検定代表
松原美里(まつばら・みさと)

保育コミュニケーション協会 代表/子ども安全検定代表
全国の自治体研修・園内研修を多数担当。
「子どもの権利」「チームビルディング」「ハラスメント防止」など、
保育現場の安心・安全と働きがいを支える研修を展開中。
著書・監修:「子どもの安心・安全を守る場面別保育のチェックポイント」ほか
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