子どもにとって「豊かな環境」とは?【こども期を大切にし、声を後押しし合える関係性を育むために】

先日、高知工科大学にて開催された「こども環境学会2025」に参加してまいりました。
2016年の富山大会以来、今回が2回目の参加です。

「こども環境学会」は、子どもたちがより良い未来を築けるよう、教育・福祉・建築・医療など、多様な分野の専門家が連携し「子どものための環境づくり」をめざす学会です。

2025年の大会テーマは、

「インクルーシブなこども環境 子どもの自由は土佐の山間より」

というもので、多様性やインクルーシブ、そして“子どもの権利”を主軸に、子どもを取り巻く環境のあり方を多角的に学ぶことができました。

🌱「土佐のキラーコンテンツを育てたこども環境」

高知といえば坂本龍馬。
龍馬の生い立ちや人格形成に影響した「こども期の環境」について、当時の写真や手紙から探っていくという興味深い講義がありました。

印象的だったのは、幕末の土佐の子どもたちが、自然の中で裸足で走りまわり、街の中に「子どもの姿」が当たり前のようにある環境だったということ。まさに「子どもの楽園」だったのです。

龍馬は、調整役としての役割を担い、表には出ずとも人を繋げる存在。
今の保育現場にも通じる、縁の下の力持ちの大切さを感じました。

🧩「Nothing About Us Without Us」――子どもを抜きに決めない

「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」
この言葉は、子どもたちの権利を考える上で非常に重要な視点です。
保育や教育の現場では、大人が主導して決めがちですが、「子ども自身の声を聴く」「自己選択・自己決定を尊重する」ことの大切さを、改めて学びました。

たとえば――

  • お風呂の入り方も子どもと一緒に決める

  • 面談を通じて、子どもが自らの成長を実感できるようにする

  • 地域や商工会と連携し、不登校の子どもに就労体験の場を提供する

  • 終了後のフォローアップ体制を、民生委員や保護司とともに整備する

こうした「連携」や「共育ち」の実践事例は、保育者として多くのヒントを与えてくれました。

🌾「農福連携」で生まれる豊かなつながり

地域の農業と福祉が手を取り合う「農福連携」の実践も紹介されていました。
107人もの方が地域で就労し、支援を受けながら賃金を得て、自信と役割を育んでいるそうです。

本人だけでなく、雇用主・支援者・地域にも喜びと変化が広がっていく。
「保育も、こうした“よろこばせごっこ”なのでは?」と、心が温かくなる視点でした。

🌈「アンパンマンに見る、共生とやさしさの力」

やなせたかしさんの生き方と作品世界にも触れました。
アンパンマンは「世界最弱のヒーロー」。
でも、「誰かを喜ばせること」で自分も生かされている。

「一寸先は闇」ではなく「一寸先は光」。
この言葉の奥にあるのは、「勇気=やさしさ」という哲学でした。
子どもと関わる保育者として、心に刻んでおきたい価値観です。

👶「こどもまんなか社会」とインクルーシブな保育

最後のセッションでは「子どもまんなか社会」を実現するための、保育と療育のあり方について議論が交わされました。
印象的だったのは――

  • 「これまで子どもが社会に合わせていた。これからは社会が子どもに合わせていく」

  • 「療育」と「保育」を隔てず、子ども一人ひとりの声に耳を傾ける

  • 「大人の安心感」ばかりを求めず、「挑戦」や「ゆっくり育つこと」の価値を認める

  • 「できない子」「難しい子」とラベリングするのではなく、“意味”と“背景”に目を向ける

という視点です。
「子育て支援」や「保育」が、単なる“サービス”になってはいけない。
本当に子どもの育ちにとって豊かなものとは何か?

“子どもと共に在る大人”として、問い続けたいテーマでした。

こども期は、人生でいちばん濃密な時間

乳幼児期は、親も保育者も、ともに大きく成長できる貴重な時期です。
「離乳食って、楽しくて食べるものなんだ」「子どもって、こんなに世界を面白がるんだ」と気づく日々。

子どもたちの「声」と「遊び」と「生き方」を真ん中に据えた保育が、社会にとってどれだけ豊かな意味をもたらすのかを、改めて実感しました。
こども環境学会での学びを、日々の実践に生かしながら、これからも「子どもにとっての豊かさとは何か?」を問い続けていきたいと思います。


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