「いい先生になりたい」~保育の声掛けの「主役」とは?

新学期が始まり、
「いい先生になりたい」
~そんな思いから一生懸命に子どもたちと向き合っている先生たち。
たくさんの愛情を、ありがとうございます。

新しいクラスも少しずつ個性が分かってくると、
かかわり方のコツが見えてきたり
お互いの個性を受け入れ合う中で
新しいクラスの空気感が醸成されてくることと思います。

そんな中で、もしかすると
「なかなか子どもとうまくかかわれない・・・」
という焦りや不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

じつは、私もそうでした。

保育には一日の流れがあり、
一人一人を大切に向き合いたいけれども
集団生活の中でなかなかそうもいかず・・・
慌ただしい中で、空回りをしていました。

いい先生とは?

最初の頃、私が目指していたのは「いい先生」。
声を掛けると子どもたちが集まり、
先生のお話を聞いて 楽しそうに活動をする---。

そんな姿をイメージしていました。

実習の時はなかなかうまく行かなかったけれども
就職したら、自然にそれができるものだと。

けれども、「片づけようか」と声を掛けると聞こえないふりをされたり
食事介助をしようとすると「あっちへいって」と言われたり
寝かしつけに入ると「イヤなの!」と言われたりして・・・

逆に話を聞いてもらえないことで声が大きくなり、
躍起になり、大きな声を上げるほどに、
子どもからはバカにされるという悪循環に陥っていました。

何が悪いのか、どうしたらいいのか、
さっぱりわかりませんでした。
「いい先生」にほど遠い自分に、ガッカリしていました。

まずは、信頼関係

けれども、よくよく観察をしていくとわかったことがありました。

「お外行こうか」
~ふんわりと声を掛けると、子どもたちが動き出す、
そんな先輩の姿を見ていると、
決して大きな声を出しているわけでもなく
なにか指示命令をしているわけでもないのです。

けれども、空気感が違う。
子どもの表情が違う。
反応が、全然違うーーー。

そこには、先輩と子どもたちが向き合い、重ねてきた
関係性の積み重ねがありました。

春の日差しを「気持ちいいね」
虫を見ている子どもに「わ、なんだろう?」
子どもが「見て~!」と持ってきたら、
「わぁ!」と一緒に喜び合う。

そんな風に、何気なく積み重ねてきた日々のやり取りの中で
子どもの方は保育者のことを知り
「大好きな先生」
「この人は、こういう人なんだな」
・・・と受け入れていく中で、心の距離が縮まっていきます。

先生の方は、子どものことを
「この子は、こういう時に喜びを感じるんだな」
「こういうところがおもしろいな。」
「こんなことが好きなんだな、苦手なんだな。」
~ということが分かってきます。

だからこそ、子どもは「大好きな先生」に耳を傾けますし
保育者は、その子どもの“個性”に響く言葉を選んで
声掛けをしていきます。

そうして、結果的に「いい先生」に見えていたのでした。

保育の主役は、子ども

子どもが好きで保育者になったはずなのに、
私はいつの間にか「いい先生になりたい」という思いにすり替わり
主役が「自分」になってしまっていました。
保育の主役はーーー?「子ども」です。

けれども、私一日の流れや先輩の目に気を取られ、
子どもの心を受け止めることを忘れていたのでした。
だから、空回りしていたのです。

最初はなかなかうまく行かないことも多く、
心が焦ることもありますが
そんな時は、深呼吸をして下さいね。

信頼関係は、一朝一夕に出来上がるものではありません。
時間をかけて育んでいくもの。

まずは、目の前の子どもたち一人一人と向き合い、
じっくりと、あなたという保育者を知ってもらいましょう。

大事にしたいことを、子どもに分かる言葉に置き換えて

日々の中で、子どもにお話をする機会もあることと思います。
そんな時、私たちは大人同士だと
「AだからBだ」と ほぼ結論でお話をします。

そこには、さまざまな体験や学びを経て
私たちの頭の中で「当たり前の感覚」となるまでの
道のりがあったはずです。

子どもたちは今、その道のりを歩み始めたところです。

その体験自体が尊いもので、
保育者はその学びや気づきに寄り添う存在ですが
では、どんな声掛けで「寄り添う」といいのでしょうか?

子どもたちにとって大切なことはなんでしょう?
どんな姿になってほしいと感じていますか?

まずは、頭の中で漠然と感じていることを
「言葉にしてみる」練習から、初めてみましょう。

「走っちゃダメ!」

「お部屋の中で走ると、
小さいお友達がはいはいしているから、
ぶつかったらびっくりしちゃうし、危ないかもしれないね。
ゆっくり歩いてくれると嬉しいんだけど」

~というように。

また、同じように言葉を使っていても

  • 背景
    (大好きなお父さんと一緒に登園した・親御さんの離婚が決まった、など)
  • 子どもの状態
    (気が付いていない・やりたいことがあり、まっしぐら・落ち着かなくてふわふわしている状態、など)
  • 保育者の心理状態
    (リラックスしている、イライラ焦りを感じている、など)

~によっても、反応が異なることがあります。

そういう時には、
子どもとかかわりながらも「こういうことかな?」と仮説を立て
気持ちを察しながら寄り添っていくことも大切かもしれません。

関係性・背景・文脈によっても
「こうだから、こう!」
と明快に答えがあるわけではないのが難しいところ。

一方で、いろいろなシチュエーションで保育を行っていくことで
声掛けの引き出しが増え、やり取りの面白さが広がっていくのも
奥深い保育の魅力でもあります。

いろいろな声掛けを試して、
子どもたちと一緒に成長させてもらいましょうね。


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