保護者に寄り添い、保育士も守るアプローチ~保護者とのコミュニケーション研修レポート
令和7年5月18日、オンラインにて「保護者とのコミュニケーション研修」を開催いたしました。
日曜日の貴重な時間を割いて参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。
多くの方が抱える保護者対応への想い
どんな年代の方でも、保護者対応については多くの悩みや葛藤、課題を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
そんな皆様に向けて、今回は、保護者への理解と共に、保育士自身の心も大事にしてほしいと願い、「保護者に寄り添い、保育士も守るアプローチ」というところをサブタイトルとしてあげさせていただき、2時間の研修をオンラインで進めさせていただきました。
まず、保護者対応では私自身も数々の失敗を重ねてきたことを打ち明けながら、自己紹介と本日の流れをお話しさせていただき、本題へと入っていきました。
時代背景から現在を読み解く
保護者対応のより良い方法があるなら早く知りたい!と思われるかもしれませんが、いきなり現状を見るのではなく、私たちの育った環境を振り返り、その時代に何があったのか、皆さんと考えることからスタートしました。
そこから見えてくる現在の子育て環境で、一体何が起きているのか、背景には何があるのか、事例を交えながらお話していきました。皆さんの中に、早速身近な親御さんの困りごとに気付く、ハッとしたような視点が感じられました。
ニーズを読み解くというところでは、保護者の様々なニーズ例を通して、ひとつひとつ実際にあった事例や体験談と共に、「あるよね〜。あるある!」から、「あ!その姿って、本当はこんな思いやサインが隠れていたのか!」という気付きへと変化していく場面を、皆さんと共有し合いました。
心の奥にある保護者の本当の思い…。それぞれが、フッと頭をよぎった保護者について、本当はこんなニーズがあったのかもしれないと振り返り、温かいまなざしに替わっていく瞬間を、一緒に体感させていただきました。
リクエストとして受け止める
リクエストとして受け止めるというところでは、保護者からご意見をいただいて、ウッとなってしまうような場面で、それを批判ではなくリクエストとして受け取るとどうだろうかというご提案をさせていただきました。
ここでもひとつひとつ、例えば…という事例をお伝えしながら、表面的な言葉の奥にある本当の想いに目を向けることが、皆さんの苦しい気持ちや葛藤を、少しでも楽にしてくれるかもしれない…と、皆さんと分かち合いました。
言葉の表面ではなく、その奥にある本当の想いに注目することで、真の願いが見えてきやすいかも!と、気付き合う場面が印象的でした。
とは言え、ニーズもリクエストも全て受け入れなければならないのか?という疑問が湧いてきますよね。
そこで、私たちのお役目は何なのか、という問いを皆さんと考え合う中で、保育というのはサービス業ではなく、あくまでも福祉の視点で捉えると、子どもと家族の人生を長い目で支援していくことも大切な役割のひとつなのかもしれないよねと、皆さんと共有し合いました。
いっぱいいっぱいで子育てしている親御さんが、すぐに答えや対応を求めたくなる気持ちは間違いではないけれど、それに何でも応えるのではなく、まずリクエストとして受け止めつつ、園全体で考える機会にしていくことで、保護者の養育力を支えるとともに、自園の保育の質を高めるきっかけにもなり得るかもしれないという見方を提案させていただき、参加者それぞれの視点が深まる時間となりました。
そして、気持ちに寄り添うコミュニケーション、相手が受け取りやすい伝え方ということで、ここではワークを通して保護者の気持ちを実際に体感しながら、ペーシングや黄金ルールというとっておきのスキルを事例と共にご紹介しました。
気付きからの習得だったので、すぐにでも実践してみたい!と皆さんの気持ちが高まり、実際にその後の感想からも、「早速次の日に実践したら、うまくコミュニケーションが取れました!」という嬉しいお声をいただきました。
保育者自身の心を大切に
最後に、私からのプレゼントとして、ご自身とお仲間の心を守ってくださいねというメッセージと、その方法のひとつを、私の実体験をお話しながら提案させていただきました。
子どものために、保護者のために、毎日一生懸命立ち続けている皆さんだからこそ、傷ついたり、悩みが深くなったりして、苦しくなってしまうことがあるかもしれません。でも、よりよい保育のためには、保育者自身がいい状態でいることが何より大事です。ご自身のケアと、お互いにケアやサポートをし合える人間関係や職場環境づくりを、どうか大切になさってくださいね。
新しい景色への期待
保護者対応に苦手意識や課題を抱えている方は、実にたくさんいらっしゃると思います。
でも少し視点や受け止め方を変えられたら、ご自身にも職場にも今までとは違う景色が生まれるかもしれません。
参加者の皆さんが、明日から実践してみたい、意識してやってみよう、と前向きなまなざしで語ってくださったのが、とてもまぶしくて、皆さんを応援しようと思っていた私の方が、学びと勇気をいただいた、濃厚な時間となりました。
ありがとうございました。
皆様との出会いと学びの時間に、心から感謝しております。これからも、保護者の皆様と保育者の皆様、そして何より子どもたちの笑顔のために、一緒に歩んでいければと思います。
<講師:認定ファシリテーター講師>
小方久美講師 (5月18日10:00~12:00担当)
認定ファシリテーター育成講座7期生終了。
東京都内の公立保育園にて保育道一筋40年。現役プレイヤー、リーダー(主任・主査)、施設長を経験する中で、4500人以上の子どもたちの育ちとその家庭の支援に関わってきた。「人生の根っこを育む」「遊びがド真ん中」をモットーに職員たちと保育を展開し、保護者や地域に向けても、自己肯定感と自尊心を育む保育を発信している。
職員とのコミュニケーションや保護者対応で苦悩と葛藤を抱えていたところから、コーチングやファシリテーションについて学びを深める。「答えは相手の中にある」という視点を通して、園長としての在り方が職場を変えていくという大きな気付きを得、傾聴とボトムアップによる職員の意欲向上と支え合えるチーム作りへと舵を切った。成長を喜び合える前向きな職場づくりをサポートしている。
保育者たちのその先には、未来を作っていく子どもたちがいる。子どもたちの笑顔と、豊かな未来を支えるために、保育者たちが勇気をもって1歩踏み出すことができるような後押しをしていきたい。現在、園長業の傍ら、ファシリテーター講師としての活動も展開中。
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